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最終更新日2026年9月14日
「自分は偏差値が低いから、人に勉強を教えるなんて無理だ」
小学校教諭や養護教諭になりたいと考えながら、そこで止まってしまう人は少なくありません。
そう思わせる材料も、実際にネット上にはあります。
「教員の質が低下している」「偏差値50を切る大学から新任教員が出ている」といった記事を目にした方もいるはずです。
この記事では、まず数字を見ます。
教員採用試験の競争率がいまどうなっているのか、そしてなぜそうなったのかを、文部科学省の公表資料で確かめます。
そのうえで、採用で実際に問われているものは何かを見ていきます。
結論を先に言えば、学力は後から補えます。
補いにくいのは別のものです。
教育の仕事は誰にでもできるわけではありませんが、「偏差値70だから向いている」という種類の仕事でもありません。
目次

文部科学省は毎年、公立学校教員採用選考試験の実施状況を公表しています。
最新は令和7年度(令和6年度実施)分で、2025年12月25日の公表です。
| 区分 | 競争率(採用倍率) | 前年度 |
|---|---|---|
| 小学校 | 2.0倍(過去最低) | 2.2倍 |
| 養護教諭 | 8.2倍 | 8.2倍 |
| 全体 | 2.9倍(過去最低) | 3.2倍 |
※競争率は「受験者数÷採用者数」です。
全体は小学校・中学校・高等学校・特別支援学校・養護教諭・栄養教諭の合計。
小学校は受験者34,434人に対して採用者17,078人。
採用者数は昭和58年度以降で最も多い水準です。
かつてはまったく違いました。
平成12年度の小学校は競争率12.5倍で、採用者は3,683人でした。
いまは採用者数が4倍以上に増えています。
ここが大事なところです。
倍率の低下を「志望者の質が落ちたから」と説明する記事がありますが、文部科学省の分析はそう書いていません。
文部科学省は、小学校の受験者数が減った理由をこう説明しています。
小学校における受験者数の減少傾向は、臨時的任用教員や非常勤講師などを続けながら教員採用選考試験に再チャレンジしてきた層が正規採用されることにより、既卒の受験者が減ってきていることなどが理由
つまり、毎年受け直していた人たちが採用されて、受験者側からいなくなったということです。
分母が減って倍率が下がった、という構造です。
背景には、教師の年齢構成による大量退職と、それに伴う大量採用があります。
「学力の低い人が入りやすくなった」という話とは、中身が違います。
一方で、正直に書いておかなければならないことがあります。
養護教諭の競争率は8.2倍です。
小学校の2.0倍と比べると4倍の開きがあり、前年度から下がってもいません。
「教員採用試験は倍率が下がっている」という一般論は、養護教諭にはそのまま当てはまりません。
養護科を目指す方は、一度で合格することを前提にせず、時間をかけて挑む構えでいたほうが現実的です。
その道筋については、この記事の後半で書きます。

競争率が2.0倍でも、受験者の半分は不合格になります。
では、何で選ばれているのか。
教員採用試験は多くの自治体で一次試験と二次試験に分かれ、一次試験で主に筆記、二次試験で人間性や指導力を見ます。
そして自治体が公表している「求める教師像」を読むと、重視されているものがはっきりします。
横浜市は、求める教師像を3つ挙げています。
– 教育への使命感や情熱をもち、学び続ける教師
– 「チーム学校」の一員として、ともに教育を創造する教師
– 子どもによりそい、豊かな成長を支える教師
「学力の高い教師」とは書かれていません。
求められているのは、使命感・情熱・学び続ける姿勢・協働する力・子どもによりそう力です。
これらは学力とは別の能力です。
学校には多様な子どもが通っていて、全員に同じ支援をすればよいわけではありません。
「この子にはどんな方法が向いているだろう」「どんな機会をつくれるだろう」と、一人の子どもと向き合って考える。
自分の学力だけで解けるたぐいの問題ではありません。
小学校教諭は学級担任として1日中子どもたちと関わります。
授業時間以外でも思いや願いをくみ取り、一人ひとりの成長を支えます。
一つの指導方法が正解というわけではないので、熱意と、大人としての人間力が求められます。
養護教諭は、子どもの心と体の健康を支える仕事です。
クラスで授業をすることは多くありませんが、保健室で悩みを聞き、けがや病気の手当てをします。
悩みや不安を抱える子どもと向き合うとき、必要になるのは学力ではなく、受けとめる力と人間性です。

学力ではないものが問われる、というのは抽象的に聞こえるかもしれません。
小学校で実際にあった事例を紹介します。
問:次の数字を漢字で書きなさい。
100
256
3827
子どもの解答
百一
二百五十七
三千八百二十八
出題した先生の意図は、「百」「二百五十六」「三千八百二十七」と書かせることでした。
しかし子どもは「次の数字」を、書かれた数の次の数だと読み取ったのです。
正解を一つに決めていれば、×になっていた答えです。
この先生は、子どもがどう考えたかを読み取って○にしました。
教員に求められるのは、この姿勢です。
「なぜこの子はこう答えたのだろう」と考えられるかどうか。
ここに偏差値は関係ありません。

ここまで学力以外の話をしてきましたが、勉強がまったくできなくても教員になれる、という意味ではありません。
子どもに授業をする以上、最低限の学力は要ります。
大事なのは、その2つは補いやすさが違うということです。
公立学校の教員採用試験の一般教養では、中学までの学習を理解していれば正解できる問題が数多く出ます。
これは採用する側からの「最低限ここまでは理解しておいてほしい」というメッセージです。
この記事を読んでいる方の多くは、高校生以上のはずです。
中学の内容は一度は勉強したことがあるので、取りかかりやすく、理解も戻りやすい領域です。
勉強が苦手でも教員を目指したいなら、自分が分かるところまで戻って、小学校・中学校の復習から始めてください。
遠回りに見えて、これがいちばん確実です。
二次試験で問われる人間性や実践力は、一朝一夕には身につきません。
長い時間をかけて自分を育てる必要があります。
本校では、入学時に新入生へこう伝えています。
みなさんは、実習などで教育現場に行けば、子どもたちからは先生と呼ばれる存在です。しかし先生と呼ばれるからと言って、急に今日から先生になれるわけではありません。子どもたちの先生になるには、人間性、実践力を備えていなければなりません。この2年間、学生という身分ですが、それに甘えず「自分は教師だ」と意識して日々の生活を送り、真の教師への準備期間としてください。
教員・社会人としてのモラル、コミュニケーション、礼儀、対人関係。
勉強以外の部分を問われる場面は、現場に出れば毎日あります。
「自分が教師だったらどうするか」と考えながら日々を過ごすだけで、行動は変わります。
学力の復習と違って、こちらは今日から始められて、しかも時間がかかります。
だから早く始めたほうがいいのです。

補う努力を前提にしたうえで、もう一つ言えることがあります。
「勉強が苦手だった」という経験そのものが、教える側に回ったときには資産になります。
学校現場に出れば、勉強が苦手な子どもと必ず出会います。
そのとき、自分も同じところでつまずいた経験があるかどうかは、大きな差になります。
勉強には、多くの子がつまずく決まったポイントがあります。
自分が理解に苦しんだところは、子どもも同じように苦しむ可能性が高い場所です。
どこで手を止めるかが予想できれば、どんな支援を用意すればいいかも考えられます。
すらすら理解できた人には、この見当がつきません。
勉強が苦手だったからこそ、子どもの学力以外の良さに目が向きます。
いまの教育では、テストの点数では測れない力——意欲、思考力、判断力、表現力、コミュニケーション能力——を育てることが求められています。
教員に豊かな人間性が求められるのと同じことが、子どもにも当てはまります。
勉強以外に大切なことがたくさんあると身をもって知っていることは、子どもを見る目の幅になります。

教員採用試験は、学力の高い人でも一回で合格するとは限りません。
ここで折れてしまう人がいますが、その必要はありません。
教員免許状を持っていれば、臨時的任用職員(臨任)や非常勤講師として、学校現場で働けます。
本校でも、現役で合格を逃した卒業生の多くが、臨任や非常勤として学校現場に就職しています。
そして現場を経験すると、「教師はやりがいがある」「続けていきたい」と実感して、もう一度挑戦しようという意欲が湧いてきます。
臨任の経験は、採用試験でも有利に働きます。
自治体によっては教職経験者を対象とした選考枠があり、筆記試験の代わりに指導案の作成など、実務に近い課題が課されることがあります。
筆記が苦手な人にとっては、現場経験がそのまま武器になります。
(枠の有無と内容は自治体ごとに違うので、受験する自治体の募集要項で確認してください。)
本校の卒業生の場合、小学校教諭で1〜2年、養護教諭で1〜4年ほど臨任・非常勤を経験してから採用試験に合格する人が多くいます。
養護教諭で年数が長めなのは、先に書いた8.2倍という競争率の裏返しです。
時間がかかることを最初から見込んでおけば、途中で折れずに済みます。

教員になるには、働きたい校種の免許状が要ります。
小学校で働くなら小学校教諭免許状、保健室で働くなら養護教諭免許状です。
取得できる場所は、大学・短期大学・専門学校・教員資格認定試験です。
もっとも一般的なのは大学で、小学校教諭免許状は教育学部系の学科で取れることが多くなっています。
専門学校でも取得できますが、その多くは通信制大学などに籍を置く「併修制度」を使う形です。
専門学校の授業だけで完結するわけではありません。
そのなかで、大学との併修なしに、専門学校のカリキュラムだけで小学校教諭二種免許状・養護教諭二種免許状を取得できる文部科学大臣指定の教員養成機関は、全国で本校のみです。
文部科学省が公表している「指定教員養成機関一覧」(令和7年4月1日現在)を見ると、小学校教諭二種免許状の指定機関は全国で1件、養護教諭二種免許状も1件で、どちらも横浜高等教育専門学校です。
教員免許状が取れる大学の偏差値は幅広く、自分の学力に合う進学先は必ずあります。
そのうえで、大学よりも現場に近い実践(授業の進め方、カウンセリングの方法など)を先に学びたいなら、専門学校という選択肢もあります。
本校の入試日程や、試験区分ごとに必要な書類は、こちらにまとめています。
▶︎ 【2027年度入試】横浜高等教育専門学校への出願方法|日程・試験区分別の必要書類・封筒の作り方まで

本校の初等課程を卒業したAさんは、偏差値40台の高校から入学し、在学中に教員採用試験へ現役合格しました。
本校には高校偏差値50以上から入学する人も、大学を卒業した人も、社会人経験のある人もいます。
入学時点では、周囲との基礎学力に差がありました。
Aさんがやったことは、特別なことではありません。
2年生に進級したころには、一次試験に必要な学力にかなり近づいていました。
二次試験については、通常授業や対策授業のなかで模擬授業やロールプレイを重ねていたので、真面目に取り組んでいるうちに力がついていました。
本番では一次を突破し、二次で模擬授業を堂々とやりきって合格しています。
正直に書きますが、これはかなりの努力の結果です。
学校の授業を受けているだけで簡単に受かるものではありません。
ただ、目標を決めて努力を続ければ合格できる、というのも事実です。
▶︎ 横浜高等教育専門学校から小学校教諭・養護教諭になった卒業生

ここまで、教員に問われるのは学力だけではないと書いてきました。
そうであれば、学校選びも数字だけでは決められないはずです。
オープンキャンパスでは、在校生が受付から案内します。
教職員だけで運営していません。
彼らが普段使っている教科書や、授業で作った制作物を、本人から見せてもらえます。
体験授業も在校生と一緒に受けます。
最後には座談会の時間があり、雑談に近い雰囲気で話せます。
どんな学力の人が、どんな経歴でこの学校に来て、いま何を学んでいるのか。
記事に書ける一般論より、目の前の学生を見たほうが早く分かります。
学力に不安があるなら、それも個別相談でそのまま話してください。
本校には、学力の数値基準を設けていない試験区分があります。
入学の条件や、どんな経歴の人が実際に入学しているかは、こちらにまとめました。
▶︎ 横浜高等教育専門学校の偏差値・倍率は?公表していない理由と、入学できるか判断する4つの材料
本記事の競争率・受験者数・採用者数は、次の公的資料に基づいています(2026年9月時点)。
競争率は毎年変わります。
最新の数値は文部科学省の公表資料でご確認ください。